総合会計事務所
総合会計事務所(相続専門・小規模事業専門)税理士 縄田屋一成
税務説明会
日時 平成17年10月5日(水) 19:00 〜 20:00
場所 市川市文化会館 大ホール
テーマ 「持分」・「贈与」・「住宅取得特別控除」について
不動産の購入時に皆様がお悩みになるのは主に「持分」、「贈与」、「住宅取得特別控除」、だと思います。この3項目を単独の議題にするのは難しく全て相互に重要な関連性があります。
まず初めに考えるのが「持分」でしょう。その不動産に対する出資の割合、つまり所有権の割合をどうしたら良いかは気になるところです。以前は夫の単独所有・単独持分が一般的でしたが、最近は夫婦共有が増加しています。現代社会の中で以前に比べて共働きが多くなり、妻が子供を出産するまでは働くとういうのは一昔前になり、働く女性は更に増加している状況です。「持分」についての考え方は各人で異なって良いと思います。また、それに伴う「住宅取得特別控除」は実際にお金の還付が得られますので最も注目している方も居るでしょう。そして住宅購入資金を準備する上での「贈与」も併せて考えなければなりません。
不動産の購入は車両の購入と訳が違います。ご自身達のライフプランを熟考しながら決定してください。
持分の考え方について

夫婦別財産制によるメリット
住宅を購入するときに夫婦共有持分(共有名義)にする場合の主なメリットは「住宅取得特別控除(住宅ローン控除)」と「3000万円の特別控除」を受けられる可能性があるからです。
住宅ローン控除は夫婦各自に適用できます。住宅ローン控除は自分が支払った年間の所得税を超えて還付されません。ですから夫の単独名義で住宅ローンを受けている場合には還付金が切捨てられてしまう可能性があります。
(例)
借入金4000万円
年末借入金残高1%で40万円の控除可能
実際の年間支払い所得税額30万円
切捨て金額10万円
ところが、これを所得税を納付している妻にも持分を持たせることによって切捨て部分を拾上げる事が出来ます。
ただし、妻が事情により専業主婦になったり、収入があっても所得税がなかったり又は所得税が充分でなかったりした場合はその効果は無くなります。
そして、将来売却した際に共有持分(共有名義)なら3000万円×2名=6000万円の譲渡特別控除が受けられます。つまり、売却益が6000万円までが無税になるのです。
しかしながら現在や近い将来においてこの恩恵を享受する者は極めて少ないと言えるでしょう。

購入時のメリット
財産分割や贈与・相続等、将来の条件&環境を除外して考えられるメリットは、購入時のローン付け(借入金設定)です。夫の単独収入だけではローン設定が不可能な場合に妻の収入を合算して審査を受けるケースがあります。基より金融機関にとってはこの方が担保力も増加し、かつ回収の保証も得られることになります。
熟考したら将来の不具合が生じる可能性はあるかもしれませんが、購入に関しては有効な手段になります。
なお、諸費用は夫婦どちらかが負担しても問題ありません。印紙税、登録免許税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、消費税については妥当な金額である限り税務署も追及しません。

贈与について

相続税精算課税制度
(祖父母からの資金提供)
住宅購入の際には頭金や諸経費等も含めまとまったお金が必要になります。必要なだけの自己資金があれば問題ありませんが、充分でないのが実情でしょう。また、父母にもお金が無いケースがあります。頼りになるのは祖父母だけ、という場合にはどうしたら良いのでしょう。
この場合には連続贈与という方法を使います。皆さんご承知のように平成15年より「相続税精算課税制度」が創設されました。無税の限度枠が2500万円あり(住宅取得資金であれば限度枠3500万円)非常に有効な手段なのですが、親子間の贈与行為に限定されており孫への贈与は認められていません。この場合に一旦祖父母から親へ、そして親から孫へ「相続税精算課税制度」を連続適用するのです。住宅購入時には「家(人間関係)」と「財産」の確認と交通整理が必要です。ある意味勇気を持って、ある意味遠慮なく家族会議をしてください。

将来の無税での持分移転
(相続対策について)
よく将来の相続対策として夫婦共有持分にしました、と聞くことがあります。しかし考えてください。相続発生時に相続税を納付する相続人は全体の約15%です。ましてそれが配偶者ともなれば更に少なくなります。現在の相続税制度では5000万円の基礎控除額が設けられています。また、相続人1人当たりに1000万円の控除も加算されます。更に「小規模宅地の特別減税」といって同居住宅の評価は80%減額されます。しかも配偶者には「配偶者特別控除」があり、相続財産の半分と1億6000万円のどちらか小さい方を特別控除できるのです。このことから解るように相続対策としての共有持分は殆ど意味が無いでしょう。
(おしどり贈与)
夫婦間で持分変更する場合の非常に有効な手段として「おしどり贈与」があります。婚姻20年経過後の夫婦であれば2000万円まで無税で居住用の不動産を移転できます。時の経過によって資産価値は減額しますから、よほど条件が良いとか購入価格が1億円超などという物件を除けば、20年を経過した居住マンションを無税で妻に移転できる可能性はかなり高いと言えるでしょう。
(財産分与)
離婚により相手方に財産を分け与えることを「財産分与」と言います。慰謝料などの財産分与請求権に基づいて分与された財産には贈与税がかかりません。これは分与財産自体が婚姻中の夫婦の共同作業で得られたものという認識だからです。
ちなみに分与財産を受けた者が当該不動産を売却した場合で、かつ、利益が出るときは譲渡課税としての税金がかかります。ただし、財産分与時に時価で購入したという評価になりますので、あまり譲渡益が出る者いないと思いますが。

住宅取得特別控除について

ローン付き住宅の財産分与
居住不動産を財産分与で妻の所有権にしたのは良いものの、金融機関からの借入金の担保が残っている場合がよくあります。この場合、夫が滞りなく借入金を返済してくれたらいいのですが、滞納してしまったら大変です、金融機関に担保権の実行をされてしまい自宅が競売される可能性が出てきます。このような場合には借入金支払いを含む財産分与に関する契約書を交わしておく必要があります。この中で強制執行を承認する条項を入れておけば、夫が借入金返済をしない場合に夫の財産や収入を差し押さえることが可能になるからです。これを公正証書にまとめると尚更良いのですが。
この場合の評価額は全体の評価額から借入金の未払い残高を差引いた金額になります。不動産の値下がり幅が大きく、実際はマイナス評価になっていることもあります。また、未払いの借入金残高は当然に支払わなければなりませんので、その支払い義務を誰が負うのかは明確にしておくべきでしょう。

夫婦で住宅ローンを組まないメリット
夫婦で住宅ローンを組むメリットは「持分の考え方」の項目で説明しました。では夫婦で住宅ローンを組まないメリットは何があるか、代表例をご紹介しましょう。
皆さんの人生において不動産の購入は一回だけなのでしょうか?確かに自己使用の居住用不動産ともなれば一回かもしれません。しかし、副収入として適度な不動産物件に投資することはないでしょうか?
現在景気は回復基調であると言われていますが、これからの人生は今まで以上に自分で自分を守ることが必要になってくるでしょう。値上がりを期待してのキャピタルゲインを得るのではなく、むしろ小粒でもいいから良い物件を選び家賃収入を得ることも考えて良いと思います。このような、気持ちになることや良い物件と出会えるのは縁物です。お金が必要なときに自己資金が無くても妻の収入を担保に借入れることが出来ます。本来しなくてよいのに夫婦でローンを組んでしまう(保証してしまう)と得られるかもしれない経済的利益がなくなってしまいます。必要以上にローンを組まない、保証をしないことを頭に入れておきましょう。

住宅購入の諸決定は自分たちの現在と将来の財産そして収入、夫婦両方の親の現在と将来の財産そして収入を考慮して検討してください。サラリーマンやOLや自営業等、仕事によっても不動産に対する考え方、使い方が異なっていると思います。全体を見渡してから決定してください。
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